貸家を持たれている方には、入居者に貸家を売るケースもあると思います。実際に私の大家仲間でも入居者家族に売った人がいます。
その際に、よくある悩みが「今まで家賃をもらってきた相手に高く売りづらい」ということだと思います。でも大丈夫です、入居者にもできるだけ高く売れる方法があるのでご紹介してみますね。
入居者に貸家を売るためには売値の正当性を伝えることが大切
入居者に家を売る場合、相手は決まっているのでデリケートな交渉となります。もしも売値に不信感を持たれてしまうとその後のやり取りも非常にギクシャクしてしまいます。なので「どうしてこの値段になっているか?」をちゃんと伝えてあげることが不可欠です。
そのためには、客観的な値段の根拠が必要となりますがい、今はネットの無料査定を利用すれば簡単に貸家の見積り査定を複数社分も集めることができます。
ネットの査定なら貸家のように家の中を見せることが難しい状態でも、住所や築年数や間取りなどをもとに大まかな売値の見積りがもらえるのでとても便利なんです。
その見積り額の最高値を選んで入居者に見せれば、「どこの不動産屋がいくらの売値を付けてくれたか」を不信感を持たれることなく説明ができます。
(※ただし、正式な売値は室内外の立ち会いチェックをしてから決めるので多少は上下する可能性があることを伝えておくことも忘れないでくださいね。)
貸家の売値を決める前に室内外の痛み具合を立ち会い確認しておくこと
上記でも紹介しましたように、正式な売値を決める前には貸家の外壁や室内の痛み具合を確認しておく作業が欠かせません。
これは、先程の見積りを集めた中で最高値の業者に依頼して、あなたと不動産屋さんと借り手とで立ち会いをすれば簡単に分かります。これで家の痛み具合を元に「価値に見合った正確な売値」が出るので、もしかすると最初に提示した売値より下がることもあるかもしれません。でも、反対に、少しだけ値段が上がる可能性だってあります。
いずれにしても、正式な売値はその場では出ないので、借り手の前でべらべらと値段を喋られてしまう心配はありません。
立ち会いチェックをしておかないと値引き理由を与えてしまいます
この立ち会いをしておかないと、後から、「洗面台の床がふやけているので修理費用分の50万円は値引きして欲しい」とか「雨漏りをしてるから10万円でいいから壁紙の貼替え費用を値引きして欲しい」というように、小出しにしながら値引きを求めてくるリスクがあります。
入居者の立ち会いのもとで不動産屋さんにチェックしてもらっておけば、不具合箇所なども聞き込みをして確認もとってくれますし、不動産屋さん自身も厳しくチェックをしてくれるので、有りもしない事で値引きを要求されるリスクは避けることができます。
値引きを求められたら相場額に向けて徐々に値下げ対応すれば損しない
購入を希望されている入居者に見せる見積り書類ですが、最初は最高値のものを見せるべきです。その理由は、何か値引きを要求された時に、値引きに応えてあげるだけの余裕を残しておけるからです。
仮に、最高値の売値が1580万円で相場が1450万円の家だったとします。そこに、しつこく値引きを求められた場合には、「仕方ないですね・・・」と、残念そうな表情をしながら、最初の1580万円から80万円を引いて1500万円に値下げをしてあげることができます。
売家の相場額を知っていれば値下げに応えてもストレスは少ないです
もしも、あなたが相場額さえ知らないでいたら、きっと80万円もの値引きをするのは恐ろしくてできないと思います。でも、まだ相場価格からだ50万円も高いことを分かっていたら、わりと平気じゃないでしょうか?
ここで注意していただきたいのは、あくまでも値引きは相場額までと決めておくことです。そうしないと、相場より安く売って損をしてしまいます。損をするということは、過去の1〜3年分の受け取り済み家賃をドブに捨てることと同じになります。何のために貸家をしていたのか、まるで意味が分からなくなりますよ。
私の体験上ではあまり値引きにうるさい人には売らない方が得策
過去に私は築31年の貸家を入居者から売って欲しいと言われた経験があります。家賃は58,000円だったんですが、家から少し遠い物件ということと、管理を不動産屋に頼めない場所で自分で管理をしていた煩わしさもあって売却をすることも考えていました。
ところが、あまりにもいろんな理由をつけて値引きを求められたので、悩んだあげくに大家仲間に相談をしてみたところ、過去に同じような「値引きにしつこい人」に家を売った仲間がいました。
話を聞くと、値引きにしつこい人は後から必ず「あれが壊れたこれが壊れた」と言って文句を付けてくるので売らない方が良いというアドバイスでした。
結局、見積り査定をもらった中で「オーナーチェンジ物件」に興味がある購入者に売却をすることとなりました。入居者から求められていた売値よりもずっとまともな高値だったので、これには文句は言ってくることはありませんでした。
貸家のままで家を売るオーナーチェンジという方法もあります
「オーナーチェンジ物件」というのは、次の大家さんになってくれる人に売るといもので、買った瞬間から毎月家賃が入るものです。
これは今だとサラリーマン大家さんを目指す人も多いため、非常にスムーズに売れることもあります。入居者との売却話がこじれてしまい気まずい関係になった場合などは、最悪はこのように他の人に大家さんの仕組みごと売却してしまえばスムーズに手放すこともできます。
(入居者はオーナーチェンジを拒むなんて聞いたことがありませんし、売却後に「大家が変わりました」という事後報告でも問題はありませんよ。)
後のトラブルを防ぐには近隣住民への事前説明は欠かせません
滅多にない話ですが、入居者が近所の人とトラブルを抱えている場合には、入居者にその家土地を売ってしまうことで、近隣の住民に迷惑がかかることもありえます。
売った後から文句を言われても、支払いも登記移転も済んでからだとまず話を元には戻せません。ですから、近隣住民からあなたが責められないためにも、売却の前には、「もしかすると借りてくれている方に家を売るかもしれませんが、その節はよろしくお願いします」と、事前報告をしておくことが望ましいです。
その時点で、何か問題があれば「勘弁してください」と言われるので、何が起きてるか分かりますし、「分かりました」と普通の返事をもらえれば、何のトラブルも抱えていない入居者だということが分かります。
これはあなたが売却をする時にトラブルに巻き込まれないための事前のリサーチにもなりますから、欠かさず隣近所の4〜5軒くらいには挨拶をしておくことがベストです。
最後に・・・
入居者に家を売る場合、入居者側からすれば普通に買うよりかは多少安くなるかもしれないという期待を持っていることが多いようです。でも、別に今まで家賃をもらってるからと言って安く売る必要なんて全くありません。
ここであなたの軸がぶれてしまうと大損につながりますので、最初に「正当な値段で売る」という決意をされることをオススメします。あなたは今までボランティアで貸家をしていたわけじゃないと思います。
なのに、売る時になって急に相場よりも安く売ってあげることになったら、今まで貰った家賃の利益が一気に目減りすることにもつながります。